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大衆の悦びを奪うことが、政府のするべきことか!? [自作原稿抜粋]

 一体いつまで煙草を値上げするねん。


 貧困層が煙草を喫っているのである。


 きちんと妻帯して余暇にジムがよいなどしている人たちは、煙草以外にも悦びがあるので煙草は必要ない。


 元々、政府が健康に問題がないとして煙草を売っていたわけである。


 それで、依存症の患者をどんどん作り出しておいて、その層から高額の税金をとるのか?


 今度の値上げで、もう、フィリップモーリスは一箱500円では買えなくなる。


 国会議員は、年収2200万円ももらっていて、大衆のことを考えていない。


 誰が国会議員になっとるねん。


 コネの二世議員か、知名度だけのタレント議員ばかりである。


 月収200万円の一箱500円と、月収8万円の一箱500円と、どんだけ違うねん。


 何でアメリカの風潮に合わせなくてはならないのか。


 自分で自分の国の政策を決められない、ヘッポコジャパンが!

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『折角、太陽を見なかった日に2』ー15(最終章) [自作原稿抜粋]

 一分ほどで部屋の呼び鈴が鳴ったので玄関に立った。
「久しぶり」
「まあ、上がりィよ」
「ああ」
 散らかった部屋にはいって瀬名はテーブルのまえで一服ふかした。
 コーヒーを淹れて二人して飲んだ。瀬名は人心地ついたようだった。
「室井なァ、お前に言いたいことがある」
「何ィよ?」
「もう引きこもるのは止めて、前と同じ生活にしてくれ」
「別に、個人的なことやからエエやん。それは」
「個人的なこと…」
 瀬名はおもむろに立って東の高い位置のカーテンを開け、次いで西の大きな木戸を開けた。
「この状態を見ろ」
 交番署の外灯が見えている。
「今、昼の二時半だ」
「ええ? 夜やないのか」
「夜やないよ。夜なら、これで当たり前だ。……お前がカーテン閉めて引きこもってからだんだん暗くなった。今じゃ太陽は月の明るさしかない。ブルーの太陽だ。みんな天変地異だって騒いでる。しかも、中江市を中心に尾上市辺りまでの円だ。暗いのは」
「そりゃ済まん」
 瀬名が煙草に火をつけたので、おれもつられて一本喫う。
「前にも、こんなこと、あったらしいじゃないか。お前が原因で」
「ああ」
「何か、寝ないで山を登ったり下りたりしていたらしいな」
「ああ、事情があったんだよ」
「ともかく、お前には或る程度健康でいてもらわないと困る。何かアマテラスオオミカミのような話しだな。アマテラスは女だが。まったく」
 紫煙がこもっている散らかった室内。
 外は、空はまっ暗で各家の明かりだけで、それでも人々は仕事をするために歩いたり車で走ったりしている。
 瀬名が高い窓を開けたので、そこから紫煙がたなびいて出ていく。「病院へ行って、薬をもらってこい」
 そう瀬名は言って市販の睡眠導入剤をテーブルのうえに置いた。
 変な情景だった。
 昼なのに夜のようで、その空中で瀬名と話している。しかし、この状況を味わってもいた。
「納得がいかないから長のみしてしまうのか」
「ああ」
「何が納得がいかないのか、自分でも分からない、と」
「ああ」
 鎧武者は小さくなって瀬名の顔の横に浮遊している。
「だーれも納得なんかできてないよ。そんなもんだよ。運動が足らんな。だから考える傾向になる。分かった。来月からテニスしよ。週一で」
「ああ」
 手許にあったウイスキーをコップに注いで舐めていた。
 瀬名はそれを別に咎めなかった。
 蝉は鳴いていなかった。
 こんなに日照がないと、やはり鳴かないものなのだろう。

 探しだした薬を飲んでぐっすり眠ったあと、目覚めると窓からカッと照りつけていた。
 十六時間も眠っていたらしい。
 丁度担当医が出てきている曜日だったので予約なしで受診に行った。
 遅くなってもかまわないと言って、投薬だけでなく最終の順番で診察を受けた。
「それで、長のみしてしまう傾向からは抜けられそうですか」
 一応の気持ちの区切りはついたと医者に話した。
「室井さんに、『ああしろ、こうしろ』とは言えんですからね。自己分析されてるし、自発的に動く人ですから」
 幻覚のことも話したが、「長時間寝てないと誰でも出ます」と医師はあっさりとしていた。
 病院のある桜山市から、中江市へと車で戻る。
 何で納得がいかなくなったのか。思うように原稿が書けてなかったからだろう。無論それだけではない。もう、人間の経験することの殆どをやってしまったということもある。面白くないのだ。しかし、そう思うのはおれだけではないのだ。子育ての枷がないだけ、おれはまだ楽なのだ。
 鈴子にメールを送ったが、返事は返ってこなかった。
 鈴子にしてみれば、絵に描いた餅になってしまったおれとのつき合い。長いブランクを待てなかったのだろう。
 斎藤加奈とはメールがつづいていた。
 瀬名とは週一でテニスをするようになった。平日の火曜の昼間だった。加奈がシフトの具合で休みの日は彼女も誘って三人でやった。 躯を動かすと悶々とした考えは払拭した。
 瀬名は新しく恋愛をしたいとか結婚をしたいとかいう思いがないようで、加奈にアプローチをかけている様子もなかった。それでも異性を交えてするテニス、心なしか瀬名は活き活きとしていた。もちろん、おれもだった。テニスのあとはおれの車で三人で喫茶店にいき、文学や音楽の話をした。
 鎧武者は今でもときどき見かけるのだが、精神を圧迫するほどの存在ではなくなった。
 視界の左上の隅に距離三十センチぐらいで浮かんでいる。「室井、煙草を止めろ」と相変わらず言っているが、その大きさは見た目に一センチ角程度だ。
 今泉さんに会い、三田くんに会い、瀬名と斎藤加奈とテニスをして喫茶店で話す。
 週に一度は例の居酒屋に行き、独りで飲んでくる。
 原稿は順調。
 メルマガはIDが失効になってしまったが。
 書き下ろしの小説も月刊誌で連載されることが決まった。
 月に一度は、飲みながらではあるが何とか講演もこなしている。
 これで叔父には借金を返せそうだ。
 スコラマンション。好いところである。

                  (了)

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『折角、太陽を見なかった日に2』ー14 [自作原稿抜粋]

 加奈は、おれにちかぢか神戸でコンサートがあるので一緒に行かないかと誘った。
「悪い。今は人の多いとこ、駄目ねん」
「そうでした。ご病気のこと、あるんでしたね」
 額の傷を中心に発生する頭痛。
 キリストは磔刑のとき、茨の冠を被せられた。思えばおれはキリストの苦しみを担っているのかもしれない。

 斎藤加奈とは、その後もお茶を飲んで話すだけだった。
 篠沢鈴子とも、斎藤加奈とも、話しているときは心地よかった。
 鈴子とは性愛の相性もよかったので、恋愛感情として鈴子よりも加奈を愛するということはなかった。
 蝉のよわい夏だった。
 書き下ろしという形で小説を書きつづけている。編集に採用されるかどうかは後になってみないと分からない。そして月刊誌二誌にエッセイを書いて原稿料をもらう。仕事は今のところそういう形だ。
 だが、最近、己に懸案がある。
 酒量が多い。
 二度のみや長のみをしてしまう。
 原稿が書けても、それで安堵することがない。だから酔いが醒めているのに、また飲んでしまう。
 ノム・ウツ・カウのバランスが大事で、遊興の三要素のうち、どれかが制限されていると、他のどれかにのめり込むらしいことが新書に書かれていた。また、鬱憤を抱えている度合いによって、そののめり込み方も違ってくるとも。
 しかし、おれには今、べつにウップンはない。しかも、女も、月に二度ほど鈴子を抱いている。ウツの面でも、欲しいものを買う金は、今のところ充分にあるというのに。
 何が納得いかないのか。
 宗教か。宗教の集会の場に戻りたいのか。
 ヨーコと不倫関係になって、人との関係から集会には出られなくなった。よしんば、「もう済んだこと」と幹部にしてもおれにしても同様に払拭したとしても、二時間を超える集会。大声で全員で祈る人口密度の高い空間での集会では、持病の症状、「考想伝播」が出て恥をさらす生き地獄に耐えられないだろう。
 個人が神とどう係わっていくか、それが大事なのだ。だから別に、独りで祈っていてもよい。そこで結論は出ている。
 信仰の問題ではないのか。
 何が充たされないというのだろう。
 煙草を喫っても、女を抱いても、生業が成りたっていて他人に差し込まれない立場が出来ていても、それでも飲んでしまう。
 痛みがあるから麻酔の意味で飲む酒だった。もともとは。
 額の、四六時中の傷の痛みをまぎらわせて、さらにすこし気分が高揚すれば、それでよかった。
 しかし、今や際限がない。
 脇腹がいたい。
 それでも長のみしてしまう。
 アル中ではない。
 飲まないと決めた日は、傷の痛みさえ益しならば飲まずにいられる。
 すくない蝉のうちの一匹が、幻聴を誘発しだした。
 ーーー室井、煙草を止めろ。
 甲高い声に、その文言が含まれて聞こえてくる。
 深夜でもマンションの部屋のすぐ近くで一匹だけ蝉が鳴くようになった。
 他の人にはその文言が交じったように聞こえていないのだろうか。
 それとも、おれの脳波の作用で怪現象を呼びおこし、他の人にもそう聞こえているのだろうか。
 視界のすみに黒い虫が見えるようになった。
 また、あの世界がはじまってしまうのだろうか。
 ともかく、チャンネルを合わせずに無視することである。
 眠ることだ。眠ることだ。
 ともかく、今は眠るのだ。

 ジャズ喫茶ハラダに行き、洋食屋のモカタウンにかよった。
 給油、接客をして、ローリーで灯油を配達し、週に一度はモカタウンでピアノ・トリオで練習した。
 酒も浴びるほど飲んだ。
 七つ上の大崎晶子とは何度もホテルで身をかさねた。
 ドラムでプロになる夢は、半ば諦めかけてはいたが、将来に何の不安もなかった。
 あの時代がよかった。
 高い給料をもらっているわけではなかったが、仲間と話しているだけで愉しかった。
 独りで行き、カウンターに座ってコーヒーを淹れている久米島さんと他愛ない話をした。それだけでよかった。徹夜しても体調が崩れることもなかった。

 中江市内を車ではしり、独りで喫茶店にはいったりバーガーをドライブスルーで買って公園の駐車場で食べたりした。大型商業施設のなかをぶらついたりした。
 原稿だけは書いて、編集者に添付メールで送っていた。
 鈴子には、「体調がわるくて当分、一緒に動けない」という主旨のメールを送って距離をとった。
 とても、人と会えない。
 考想伝播のテレパシーレベルは朝起きた段階から前よりも高くなっていたし、性交までする仲の相手でもそんな状態は見せたくなかった。
 三十三年図書館にも行かないようにして、今泉さんや三田くんとも距離を置いた。
 虫は方々から多数出てきて、そいつらがかたまって光る鎧武者になった。
 鎧武者は四六時中、おれの行くところについて来た。
 車を運転していても、左前方の空中に浮遊してついて来る。
 ーーー仕事せんかい!
 ーーー仕事せんねやったら煙草を止めろ!
 ーーーどっちも出来んのなら、ワシと一緒に仙人修行しろ!
 鎧武者は、そう言う。
 ヨーコとの不倫の果てに、知人の借金の肩代わりをして眠れなくなった。あのときの鎧武者だ。
 今は、原稿を書くという仕事をしているのだが、鎧武者はそういう仕事を仕事と認めていないらしい。
 否、おれのなかに潜在意識があって、おれ自身も小説家という仕事を、仕事と認めていないのだ。だから、鎧武者はそう言うのだ。
 おれは外出しなくなった。
 暗い所でないと神経が安まらないのだ。
 大きな窓の手前の木戸を閉め、他の窓は皆、カーテンを閉めた。
 買いこんできたインスタント食品を食い、酒に浸るようになった。
 通院日をすっぽかしてしまい、翌週も翌々週も生活サイクルがおかしくなっていたので起きられずに病院に行けなかったので、ついに統合失調症の薬も睡眠導入剤もなくなってしまった。
 酒で浅い眠りを摂り、たまに小さな明かりを点けてパソコンを触るだけとなった。
 鈴子とは連絡しないので相手からもメールさえ来なくなったが、加奈は、一日に一度、必ずメールを送ってきた。「病気のことがありますもんね」と言ったことがあったように、心根で精神病者をいたわる気持ちを持っているようだった。かと云って、月並みに、「大丈夫ですか」などという言葉を頻発するメールでもなかった。

 夏をすぎても、蝉は鳴き止まなかった。
 ーーー煙草を止めろ。
 と、蝉は高周波で言う。
 煙草は止めない。
 煙草を喫うことが倫理・道徳に反しているというわけではないからだ。
 キリスト者としての姿勢として喫ってはいけないという人も居るが、キリストの言葉として、「人の身体に入るものが人を穢すのではない。却って人の口から出る言葉が人を穢すのである」と聖書に書いてある。
 充分な収入を得ず、家族に頼って、その上に贅沢にも煙草を喫っているなら責められるべきだが、それは昔のことで、今は細々とではあるが印税と原稿料で生活費をまかなっている。
 外は雨が降っているようだ。
 湿度が上がっているのとカーテンの生地をまったく日射が通過しないので分かる。
 自動巻の腕時計がよく止まる。おれがほとんど動かないからだ。
 何時かも何日かも分からなくなったときは、日本航空の世界時計というサイトで確認をして、腕時計の時刻を合わせリューズを巻く。
 酒はまだ有る。
 部屋は大分ちらかってきた。
 醒めても、ビールからはじめれば何度でも飲める。酔いで眠ることも出来る。
 オートロックのインターホンが鳴った。
 この部屋に人が直接たずねてくるのは、初めてのことだ。
 画面を見たが人らしい輪郭は見えるのだが暗すぎて誰だか分からない。
 受話器をとると瀬名洋介の声がしたのでロックを解除した。

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『折角、太陽を見なかった日に2』ー13 [自作原稿抜粋]

 梅雨明けを天気予報が報じたが、まだ夏になっていなかった。
 蒸し暑いのに蝉が鳴かない。
 明日は通院日だった。しかし行こうか行くまいか迷っていた。月に一度ある予定だが、それに縛られるのが嫌だった。治療の長い歯科を、はっきり言って断り、やっと何の予定もない日々を手に入れたつもりだったが、精神科にだけは薬をもらいに行かねばならない。
 そう思っていたが、結局病院へは行かなかった。
 アダルトライブチャットを長く見て、それでもどうにか二時にはストリーミング動画を見る方法に変えて手淫を済ませ、その後に原稿を書き、薬を飲んだのは二時四十分で、寝つくまえに例のごとく薄いコーヒーを飲みながら本を読み、完全に寝入ったのは四時をまわっていた。就寝中も、「今日は長くは寝ていられないのだ」という意識が自分を責めていたので深くは眠れず、朝九時半の目覚ましのFM放送をすぐに止め、二度寝してしまって十時四十分には起きられたが、頭をすっきりさせるために鼻をほじっていたら十一時となり、慌てて運転をしたくはないのですっぽかした。
 大体、やる事が多すぎる。
 先日は、実家の裏の竹を刈って市のゴミ収集センターにまで持っていったし、ライブチャット依存でもあるのでそれに時間を食うし、米は炊かなきゃならないし、昼間は夜中に書いた原稿を打ち出すし、書評も書く。その書評を有料メールマガジンで配信することにしたのでその手続きにもかなり手間どったし、何も今売らなくてもいいのに少しでも生計の足しにとオークションに出品したので昼間は荷物の梱包などに忙しい。
 その都度納得のいく処までやってしまおうとするので、生活時間が後へ後へとずれこむ。
 おれは性欲を吐きだしてから原稿を書くので、ライブチャットのパフォーマーがすぐに相互オナニーに応じてくれなかったら時間がかかって、相当くたくたになる。
 それならば原稿など書かずに、そういう日はすぐに寝ればよいのだが、原稿を書かないと腑抜けになりそうで罪悪感を持つことになるので酒で頭痛を紛らせながらでも書く。
 こんな生活が躯にいいわけはなかった。
 納得のいくものが書けていない。だから原稿を書いてもひと区切りついたという安堵感が得られない。だからすぐに寝ずに酒をまた飲む。
 まだタイトルが欲しい。新人賞受賞で確実なデビューは果たしたが、月収にしてみれば十万そこそこである。もっと強烈に売れる必要がある。叔父に金を借りてマンションにうつったものの、今の収入のままでは一気に返せないし、また実家に戻って車の車種も格下げという暮らしになるだろう。
 有料メールマガジンは、副収入のためにはじめる。
 本来、小説家というものは他人の作品を評したりしないものだが、ブログ上ではおれの書評は客受けがよい。
 まだ梅雨が明けない。
 とっくに天気予報では梅雨明け宣言をしているのだが、そんなものおれは信じていない。晴れたかと思うと次の日には降っている。空がもっと抜けないとな。
 久しぶりに三十三年図書館に行った。しかも歩いて行った。
 今泉さんと三田くんが喫煙コーナーに来ていたので話した。
「ここ、移転するらしいなァ」
 三十三年図書館が、新市街地のほうへ三年後に移転すると今泉さんが言った。
 そういう世の中の動きについては相変わらず詳しい。否、おれが市の広報などに目をとおしてないので疎いと言うべきかもしれない。
 そうなったらDVDの視聴コーナーなどもできて、隣市の図書館へ避けていた地元の人が多く来るようになるだろう、とも話した。
 そんなことが原因ではない。
 駐車場から図書館へ向かうこの場所で大声で早口でまくしたてて喋っている今泉さんやら西条が、訪館者には鬱陶しいのだ。
 しかし実家で一杯やってからぶらっと来るには丁度よい距離にあったのだが、三年後からはそれも適わなくなる。
「仕事のほうは順調か」
 と今泉さんにわざと訊く。
「ええ?」
 そんなことを訊かれると思ってなかったようで答えに窮していた。
「デイ・トレよ」
 自分がどう喋っていいか糸口をつかんだようで、首に力がはいったようだった。
「ああ、ボチボチな」
「信用取引とかしてんの」
「いや、それはせえへん。後で払われへんなること、あるからな」 一時はさんざん自分がデイ・トレーディングで生計を立てていることをおれたちに説明していたが、その当時は「信用取引」の「し」の字も出さなかった。
 以前おれが、「今泉さんは、ゆっくりエエとこ探すつもりやろ?」と訊いたのをきっかけに、「仕事とは言わへん人もあるけど、収入を得ることはしてんでェ」と、嘘がはじまったのである。
 その一、二年まえには、おれのイーバンクのキャッシュカードを見て驚いていて、インターネット接続をしようか、どうか迷っていると話していたのに、「デイ・トレをやっている」と言いだしたとき、「ホンならおれのブログも見てんの?」とか「メールアドレスあるなら教えてよ」とか言うと、「コンピュータはそれ専門にしか使わない。他のサイト見てウィルスが入ったら困るから」と苦肉の嘘まで言ってきた。
 現役世代なのに生業がないことを、やはり、おれ以外の隣人などにつつかれるのだろう。表向きのプロフィールをでっち上げたということだ。
 三田くんは鬱病で考えすぎてしまうし、おれは統合失調症で人前でテレパシーが出てしまうというハンデがあるから、それぞれに無職だったのは頷けるが、今泉さんだけは何故働かないのかまったく分からない。
 おれは、ようやっとのことで作家になれて体面を保てたが、投稿生活時代は随分、他人に色々と言われたものである。
「アンタ、死にんか」
 とまで、鴻上さんには言われた。
 まあ、しかし、三十三年図書館で社会的立場のない者同士の語らいがあったから随分、肩の力が抜けたのである。
 現代ほど、「仕事、仕事」と言う時代もない。かつてのイギリスでは資産のある人は働かずに、「ジェントルマン」という呼ばれ方をして無職でも堂々と居られたのである。
 日本でもバブル期と前後は、仕事よりも余暇をどう過ごすかの方に皆の意識が行っていた。
 しかも、働けないほどの精神病に罹患している人も少なかった。
 翌日、尾上市の図書館二軒に行った。
 他の人からリクエストがかかっている本があったので、急遽行かねばならなかったのだ。
 中央図書館で応対してくれた女は、おれに気があるようだった。
 目つきと優しい言動でそれが分かる。
 篠沢鈴子と結ばれたばかりだというのに目うつりした。
 端整な面立ちで華奢で、小さめの声で話すお嬢様タイプの女だった。
 中央図書館ではいつも職員が本を袋にまで入れてくれる。
 気をつかっておれが袋の入口を開けると、
「あっ、すいません」
 と彼女は恐縮した。
 頬に一色はいったようだった。
 それからしばらくは、原稿を書いて簡単な料理をつくり、昼にすこしウォーキングをし、寝るまえに本を読み、日中に原稿をタイピングしたり書評を書く日々がつづいた。
 たまに、一人で居酒屋へ行く日もあった。
 そんな日がつづいている処へ、中央図書館のお嬢様からパソコンにメールが来た。
 名前を斎藤加奈といった。
 ーーーつき合ってもらえませんでしょうか。
 自己紹介のあとに、おれを好いている気持ちが書かれ、最後にそうあった。
 おれは、「今つき合っている人が居るので、お茶を一緒に飲むぐらいだったら」と返した。
 ーーーそれでも構いません。
 喫茶店でお茶を飲み、文学の話をした。
 加奈はロシア文学などを読んでいた。
 また中学・高校と吹奏楽でクラリネットを吹いていて、おれも中学時代はトロンボーンを吹いていたので話があった。最近はクラシックのコンサートに出かけることが多いそうだ。


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『折角、太陽を見なかった日に2』ー12 [自作原稿抜粋]

 梅雨はまだ終わらないが、ときどき気のはやい蝉が鳴いた。
 まえと同じく、バッティングセンターのまえで待ちあわせた。
 彼女は半袖のブラウスにパンタロンだった。
 三ノ宮の地下駐車場に入れて、徒歩で街をぶらついた。
 映画館のまえをとおったので映画は好きかと訊いたが、おれと同じく好きは好きだが時間をとられるのが厭らしい。ゲームセンターで遊んだり洋服を見たり買ったり甘いものを食べるのが好きだそうだ。ユーホーキャッチャーでうさぎの縫いぐるみを落としてやり、プリクラで二人して写真をとった。
 空は相変わらず、ぱっとしなかった。
 仏蘭西屋でおれの奢りで彼女はパフェを食べた。
「阿呆やなァ。チョコレートパフェにしたらよかったのに」
「何で」
「フルーツパフェとチョコレートパフェは入ってるものが殆ど同じ。せやからチョコレートパフェの方が得やよ。おれ、昔、ウェイターしてたから」
 室井さんて色んな仕事していたんですね、と、鈴子はおれを褒める。
 今では小説を書くこと以外できなくなったので情けない、とおれは言った。
「篠沢さんて、学生時代、どんな部活してたん?」
「中学のときはバレー部。高校では部活しなかった」
「バレーって、バレーボール?」
「そう」
 おれはすこしエロチックな笑みを浮かべてしまった。
「ふん? 何がおかしいの」
「せやって、鈴ちゃんがジャンプしたら胸が、ぷるんぷるんになるんとちゃう?」
 おれはときどき下の名で呼んで親密度を詰めていった。
 何より鈴子の目を見ていれば、おれに惚れているのが分かる。
 神戸の街も大分変わった。
 震災後に再建されたものが多いのはたしかだが、まえの外観を再現するように造られている建物が多いので、街並みは大きくは変化していない。変わったのは人だ。平日で外まわりのサラリーマンも多く見かけるのだが、小父さんぽい人が少ない。今や還暦でもひと昔まえの五十代くらいに見えるのだから皆が若がえったということだろう。
 若者の普段着も変わった。
 どう変わったのかはファッションに疎いおれには説明しづらいが。
 ズボンをずらせた男や、アーミールックのオタクも、街にはすこし交ざっている。
 そういえば、おれが若い頃はバブルの最盛期で、男も女もジャケットを着るアイビールックなどが流行っていたものだ。
 今や機能性重視。腕時計さえしない若者が多いし、私服では女は皆パンツルックだ。
 ケイタイすらなかった。
 今や流石に道のまん中で大声で通話しているような人は見かけなくなった。皆、位牌を見るように、メールをしている。
 六甲山に登った。
 夕方だった。
 山頂付近のラブホテルに車を入れた。
 嵩のある躯だった。
 俺たちはむすばれた。
 まだオルガズムにまで導けはしなかった。感じる処をさがし、心の緊張をとってやる必要があった。
「小説を書くのって、楽しい?」
 二人して風呂にはいった後、ソファで対面しながらビールを飲んだ。彼女が明日も休みだと言うので、そのまま宿泊することにした。
「一作、完成させたら、誰でも書くの、やめられなくなるわ。それぐらい、書くこと自体、楽しィなる」
「でも、デビューするまで時間かかったんでしょ。プロになれる自信は、あった?」
 セブンスターを噴かす。
 今日の煙草は旨い。
「最初は、あったけど、途中からはやぶれかぶれ。もう、半分、諦めてたわ。……そしたら、突然の受賞」
「あたしが、気があるの、知ってた?」
「ああ、バレバレ。アンタは判りやすい」
「そう?」
「俺が行くと、カウンターの後ろに慌ててしゃがんだりしてたやん。こっちには、しゃがんでる動作自体が丸見えなんやもん」
「せやって室井さん、『アンタが好きや』いうてテレパシー沫ばしたもん。……恥ずかしいてェ」
「そいでも、そっちからは言うて来ェへんたなァ。ブログで本名明かしたりしてるから検索で俺のページに行きつくのもすぐやし、メールフォームもあったのに」
「やっぱりなァ、考えてしもてん。あのときは室井さんプロにも成れてなかったし障害で仕事も出来ェへんみたいやったし、ついて行って大丈夫かなァ、思てもて」
「そら、そうかもやわな。そいで、あのマネージャーとは別れたん?」
 鈴子はすぐに眼球を動かしておれの目から視線を逸らせた。
「……ええ? 何のこと?」
「つき合ってたんやろ。勘の鋭いおれには、それも丸見えや」
 鈴子はビールの缶を指で縦になでながら、
「やっぱりアカンかったわ。あの人、いつまで経っても奥さんと別れてくれへんし」
「だいぶ辛かったやろなァ。痩せていったもんなァ」
 冷蔵庫を開けようと立ったおれに、鈴子はすがりついた。
 俯いて肩をふるわせている。
「室井さん、ワタシのこと放さんといてよ」

 恋愛とは幻想だ。
 おたがいが、おたがいを好いているときは上手くまわっている歯車だが、どちらかが醒めるとまだ気がある方には怨嗟が発生する。
 偶然のうえに成りたっているのが両想い。
 だから、おれはもう、女を深く愛さない。有希子が自殺してからは特にだ。
 中江市に帰ってきて鈴子と別れ、マンションに戻った。
 窓から警官が立っているのが見える。見下ろす感じで小さな点として見える。
 マンションの一室というのは、一種異様な空間だ。とくにここは外部の音がまるっきりはいってこない。自分が寝不足であろうとも、酒に大きく酔っていても手淫していても、外の公の場では人々の営みが行われている。それを窓を隔てて見ることが出来る。
 ニコンのカメラは未だに奥深い技術を駆使した使い方が分からなかった。
 ここ数年、知己が大勢あつまるという場に出たことがない。瀬名や今泉さんに個別で会うことはあるが、おれと瀬名と今泉さんとで会うことはない。瀬名と今泉さんが知りあい同士ではないからだ。
 そのように、横のつながりが拡がらない。
 中学時代の吹奏楽部のような大人数の集いがない。寂しいが、それはそれでよいのだが。それに、もし、そのような会合があったとしても、考想伝播の出ることを懸念すると出席を辞退してしまうだろう。
 今どき、会社でも定期的な宴会をしない所が多いそうだ。
 仲間とか友情というものは、中学時代固有のものなのかもしれない。
 久しぶりに三〇枚もの原稿を書き、ぐっすりと眠った。

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『折角、太陽を見なかった日に2』ー11 [自作原稿抜粋]

 翌日銀行で金を卸して新幹線とバスで帰ってきた。バスのなかでは考想伝播が出そうだったので忍ばせておいたポケットウイスキーを飲んだ。それでもきつかった。
 バスターミナルからすぐのマンションに歩いて帰りつき、ひとしきり冷蔵庫のなかの缶ビールを呷った。
 まったく下手な失敗をした旅だった。
 OUTLOOKEXPRESSを起動させると二百三十一件の新着が溜まっていた。
 鈴子からのものもあった。神戸にドライブに連れていってほしいという内容だった。
 ーーー今、旅行から帰ってきたところで疲れているから、明日メールするよ。
 疲弊した頭でそう打って返信した。
 区内の大衆食堂に、ラーメンと握り鮨の出前を頼んだ。
 もう動きたくない。
 二度とバスや電車を使う旅はしたくない。
 ケイタイが鳴った。
 カーナビが直ったという電装屋からの電話だった。車さえ持っていけば、すぐに元の位置にセットしてくれるとのことだった。
 明日行くと言ってケイタイを切った。
 缶ビールを呷りながら思う。
 人間、四十もすぎればほとんどのことが体験したことのやり直しになる。借金も経験した。スナックをやっているほとんど面識もない同級生に、不倫の事実をばらされるのではないかと恐れて身代わりでサラ金から合計百万かりた。そいつが利息の支払いが遅れたので、おれの家に頻繁に催促の電話がかかり、当時無職だったおれは薬をのんでも眠れなくなった。
 その所為で精神科に自主的に入院したが、精神科病棟というものがどんなに恐ろしいところであるのかも知った。
 家族が見放し、担当医もそれを佳しと判断した場合は、院内でCT検査機に見せかけた機械で頭を縦にまっ二つに切られて処刑されるのだった。
 不倫相手の夫の江田貞夫に贋看護師となってつきまとわれ、処刑される寸前にまでいった。
 もう、この歳になれば、どうしたら身が破滅するかは行動を起こすまえに分かる。
 二度と不倫はするつもりはない。
 東京への二度の家出で、寮で物盗りに遭ったり他人から殴られたりもしたし、インネンをふっかけられたりもした。
 どう動けば安全で、どうやれば最低限の暮らしが維持できるかは身体を以て習得した。
 思えば高校のときの内臓破裂の事故での大量腹内出血といい、もう、おれは何度も死んでいるのだ。
 これから先の人生は付録のようなものだ。
 ラーメンと鮨をたいらげて、中途半端な時間だったが薬をのんで眠った。

 翌日、朝四時ごろ目ざめてしまって、ちょこっと原稿を書いてからZで市内を走った。五時すぎでもう明るかったがとくに行くところがなかった。インター・バイヤーの方は二十四時間営業ではなくなっていて開いてなかった。
 『でかい女』が居たコンビニは、夜中には無愛想な男が店番しているので行くのは止めて新中江駅よりのコンビニに行って大便をしてペプシ・コーラを買った。
 最近のおれは炭酸を欲するのだ。夜中に酒の二度のみをするときでも一杯目にはビールが欲しい。マンションに越してからも歩いていける近場にはビールは売ってないので、必然、スコラマンションの向かいの大衆食堂だけまだ二階にあって他のフロアは空きテナントばかりになった五階建てビルのまえの自販機でコカ・コーラを買ったりする。炭酸は灰汁を剥離するようにもやっとした気分を浄化してくれる。
 市の東部の『へそ公園』をすこし歩いた。『へそ公園』への往きも帰りも車中から橋の歩道をはしる女性ランナーを見た。この人を最初に見かけたのは八、九年まえの投稿生活にはいってすぐだった。今でも変わらず、スポーツ着を着てランニング用シューズを履いてはしっている。プロなのだろうか。年の頃ではおれよりすこし上に見える。
 有酸素運動をやりすぎると肌が老化する。否、しかし、そんなことぐらいは本人も知っているだろう。
 マンションに帰るとうたた寝してしまった。睡眠薬というやつは十二時間くらい効力がつづくことがある。
 十時ごろ起きて鈴子にメールを送った。
 瀬名にメールで連絡をとり、大衆食堂で一緒に飯を食った。
 その後、マンションに誘って大きな窓から空をながめながら寝そべって歓談した。
 空がみるみる内に曇って雨が降り、夜のように暗くなってからは雨は弱まり雷鳴だけがつづいた。
 相変わらず、急ぐことのない話し方をおたがいにして、間の方を愉しんだ。瀬名がメジャーリーグで活躍する日本人数人のことを話したが、おれはテレビの生放送が考想伝播が観客に影響するなどの事情があって見れないし、新聞もこのところ読んでないのでまったく分からず、「わるいけど、よう分かれへんわ」と返した。月に一度くらいテニスを健康のためにしよう、と、瀬名も初心者じゃないのでおれが提案したりした。
「それにしても、これは何なんやろうなァ」
 とおれは窓のところに立って窓外と瀬名を交互に見ながら言う。
「何が」
「ふんぎりが悪すぎる。落ちるんやったら落ちたらエエのに。もう二時間は経つで」
「ああ、雷か」
「思慮深うて、いつまで経ってもよう決断せん。まるで、おれの様な」
 瀬名は微笑してから「ハハ」と短く声に出して笑って、
「まあ、そう苛々すんな」
 おれは煙草に火を点けてひと息喫ってから、
「雷が鳴っとる間、パソコンが使えんがな。パソコンが使えな何もでけん」
 と言った。
 コンセントから漏電したり、光ファイバーケーブルから帯電することもある。第一、いつ停電になるかも分からない。
「瀬名くんは、インターネットせえへんの」

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『折角、太陽を見なかった日に2』ー10 [自作原稿抜粋]

 壁がニスで黒い。照明が裸電球に傘をつけたものが要所要所にあるだけなので暗い。たばこ屋の看板は折れ跡があってぼこぼこしている上に赤の色が黒っぽく褪せている。第一、本来店の内部にあるべき看板ではないのだし。お品書き風の大きな、地が白く塗られている木の板には、「下町のソースやきそば」「昭和食堂名物虎焼き」などとそれぞれに書かれている。黒と赤の文字で。「キリンビール」と右から左の方向で書かれたポスターの絵は、六〇年代の前髪を上げる髪型の若い主婦風の女がさわやかな笑みでグラスを持った右手を掲げている。その横の客の席にはブラウン管型テレビ。そして他の客の席には和箪笥のようなものが置かれている。
 数年前にヒットした昭和の時代をなつかしむ内容の映画に影響を受けていると、おれは内心思った。あの映画でもすべての小道具を一旦わざと古ぼけさせたりしたらしい。リアルタイムの昭和は、こんなに色褪せていたわけではないというのに。
 名古屋の地酒の焼酎の水割りを頼んだ。そのまえに中ジョッキでの乾杯があったが。
「ひょっとして、『ししとう』が、どんな物か知らないんですか。じゃあ頼んでみましょう」
 『ししとう』が来てみてから、「ああ、これだったか」と思いだす。
 枝豆も頼む。
 手羽先も食べた。
 名古屋コーチンというくらいだから、と思って頼んだのだが、手羽先という調理方法の料理自体も名古屋の名物であることを旅行から帰ってから知った。
 帆立が、また旨かった。
 この旅行自体の趣旨が、自然に飲み会という形になっていった。観光でも、語らいやおたがいの仕事の内容の取材ということでもよかったのだが、相手が、「今回は飲み会ということで」と言ったこともあってそうなった。
 おれは思う。このブロガー、普段の仕事が相当ハードなのだろう。お土産も、心には浮かんだかも知れないが、それを調達する時間をとるための体力も心の余裕もなかったのだろう。
 巷で聞くには、システムエンジニアは仕事で徹夜することもあるという。翌日そのまま自動的に出勤というようなこともあるのだろう。
 二軒目にラブホテルのようなカラオケボックスで歌い、三軒目に焼き肉屋、四軒目に割烹に行った。
 ホテルの部屋に戻ってからも普段長のみしているので飲み足りなく、一階の自販機で缶ビールを買ってきて相手につき合いをさせてしまった。
「もう、こんな時間からだったら、俺睡眠薬のむから朝起きれないし……」
 などとおれは言い、睡眠薬をのんで眠っている間に、たとえばお金を盗られるかも知れないし、一般論としてはブログに顔写真も住所も載せていない人は信用できないし、などということを酔って理性がずれているので力説してしまって、気まずくなったので酒の充ての乾き物を買ってくると言って部屋を出てコンビニへと歩いた。 その帰りに、
「お兄さん、遊んでいかない?」
 とアジア系の女に声をかけられた。
 すこしの消費なら、丁度色慾も溜まっていたことだし、安い出費で抑えておこうと思って誘いに乗った。
 ビルの地下に階段で降り、エレベーターに乗るとマッサージをやっているビルのブロックに着いた。
「お奨めは、このコースです」
 と女が指し示したのは六万円のコースだった。
 いくら何でも、そんなに浪費する気はない。
 一万円のコース。
 ただのマッサージに仰向けになってすこし性感帯ーーー内腿などーーーを刺激するものだった。
 僅か二十分ほどでもう終わりだと云う。
 延長料金三千円を払う。
 同じことの繰りかえし。
 もう帰ると云って店を出て歩いていると、「今度は、もう一寸サービスするから」と同じ店の別の女が声をかけてきて、それに乗る。
「もう金がないねん。お金下ろせるとこある?」
 と訊くと、ATMのあるコンビニを教えてくれたが、店を遠まきにする位置で、「私は、ここで。独りで行ってきて」と言って立ち止まっていた。
 後から考えると、金を下ろしに行かせるというのが法律に抵触するのだろうと分かった。
 一万円を払って受けたのは本当のマッサージ。「ホントのマッサージはどうでもいいねん。そんな事のために来たわけやないから」と言うと、また別の女に代わって一万円払う。
 やっとのことで女の手しごきで放出した。
 否、一回目のときには一度別室にいって一万円払って、さらに宿泊するかと訊かれて泊まると言って五千円払ってその後、ほったらかしにされている。
 結局、いくら遣ったことになるのだろう。
 頭がいたい。四万八千円も遣っている。

 ツインの部屋に戻るのが気が重かった。たとえ自分の金でとしても、相棒を放っておいて自分だけ美味しい思いをしてきたのである。
 往きそうになって、「口でして」とか、「挿れさして」とか言ったが「それは出来ないよ」の一点張りで、結局服のうえから乳を執拗に揉んで腰に抱きついて果てた。
 酒がはいりすぎてたので時間がかかりすぎ、結果金もかかったということだ。
 部屋をノックしたが応答はなかった。
 仕方なく、フロントで合い鍵を借りた。
 一時的に灯りを点けざるを得なかった。
「ごめん。長いこと出てて。……実は客引きに遭って」
 そうですか、そういう処に行ってられたんですか、俺なんか、そういうのもぜんぜんありません、と相棒はかえした。
 自分用に買った缶コーヒーを、気が病んだので、「これでも飲んで」と相棒にわたし、「自分の分、も一遍買ってくるわ。それと合い鍵かえしてくる」と言って部屋を出た。
 寝間着はセルフサービスで一階にとりに来ることになっていたというのに、まったく関与せず相手を服のまま放ったらかしてしまったことも自戒した。
 酔いのせいもあり、朝までうとうとと眠った。
 翌日、彼とわかれて延泊した。
 普段からブログで、「スキンシップには大人の場合握手だ」などと書いていたので、どちらからともなく手を差しだして最後は『ハンド・イン・ハンド』型の握手をして別れた。
 再入室までの時間のやりくりに困り、インターネット・カフェに三時間逗留した。
 再入室にあたって、もう金が心もとないなかで緻密に計算して資金を投入できると踏んでノート型パソコンをフロントで借りた。叔父に借りた金の残りは、マンションのベッドの下だ。
 フロントは昨日の娘とは交替していた。だが、感触のわるい娘だった。制服の帽子のせいもあるが眉間に皺がよりがちであり、それもおれ自身に頭痛から片目を閉めがちになってしまうという感じのよくない表情が出てしまう場面がすこしあることの鏡の作用というのもあるだろうが、全体的におれを怖がっているような応対だった。
 また、本人確認が割に長くかかったのも要らぬ詮索を発念してしまうことだった。
 精神病患者は、『マル精』という裏情報でのマークが様々な場面でついていると他の患者に聞いたことがある。暴力団に『マル暴』のマークがあるように。
 そういう風に、切れると何をするか分からない人などと思われていると嫌だ。精神病患者をひと括りにしないでほしい。
 ネット接続は、スピードは遅かったが普段利用しているサイトが利用できるので気がまぎれた。
 昨日すっきりしたので性欲は湧かなかった。だが、それも後で思いだしてみれば間違いで、普段から恋情を持っている三十三年図書館の既婚の美人を思い浮かべて、どうせ名古屋に来ているのだし考想伝播も想念も兵庫までなら影響することもないだろうと思い、それにもし影響するとしたら想念の方だけで第三者にはまったく知られずにピンポイントに本人にだけ作用する筈だしと思って、絶好の機会を逃すものかと顔と全裸の肢体を想像しながらとことん手淫したのだった。
 食事もコンビニのサンドイッチで済まし、ぐっすり眠った。

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『折角、太陽を見なかった日に2』ー9 [自作原稿抜粋]

 いよいよ、関東のブロガーと会う日程が近づいてきた。
 システムエンジニアをしているらしいから、その仕事内容を聞くのが愉しみだ。
 男同士ではおたがいの仕事の内容を紹介し合うものだ。新聞を読んで時事ネタを話しあうものだと言う人もいるが、そんな人にかぎって、机に向かうだけの仕事しかしたことがないかプー太郎だ。
 今泉さんや古川と話すのとは違うおたがいを尊敬し合う話になる筈である。
 出会いが少なかったのか、おれの一つ下の学年という年まわりでずっと独身である。しかし二本の足で立っている。自分の昼の弁当を自分でつくる人だ。
 日本酒党で酒豪なのだ。ブログ記事からそんなことも解る。
 おれも酒に剛いし、おたがい長飲みや二度のみをしてしまう傾向まで同じだから、きっと話が合うだろう。
 ノート型パソコンを持っていこうか止めておこうかと迷っている。
 最近のおれは、ズボンのポケットにハンカチを入れ忘れていたりする。
 ひょっとしたらどこかに置き忘れることも予想できるからだ。
 泊まるホテル『東横イン』には、パソコンを貸しつけるサービスもあるようだが、土曜日では準備品が皆すでに貸し出されていることも考えられる。
 それよりも問題は、新大阪までのバスの車中とそこから名古屋までの新幹線の車内で考想伝播が出ないかどうかだ。
 今や、自分のブログに本名さえ明かして顔写真や動画まで挙げていて、そのアクセスが多いという一寸した有名人なのだ。おれは。
 そのおれが車中で恥を掻けばまたたく間にネットで中傷されてしまうだろう。
 車は先日カーナビが故障してしまったので、名古屋インターを降りてから右往左往するのは必至である。そうなると、神経も相当疲れるだろう。
 おれは方向音痴なのだ。

 斯くして当日となった。
 前々夜にはライブチャットをして遅くなってしまったので、健康のための最低ラインの深夜四時には打ちきって原稿も書かずに寝て、前夜は悪癖に浸からないために午後十時には睡眠薬をのんで仰臥した。
 そのため、朝の五時に目覚めてしまったが、頭は非常にすっきりしていた。
 十二時十分か、十三時十分のバスに乗れば新幹線の所要時間から逆算しても間に合うはずだったが、些か時間を持てあましたので荷物を持って歩きで三十三年図書館に寄った。
 果たしてそんなときに限って見知った顔は来ていず、仕方がないので例の司書の女にひと声かけてからバスターミナルに向けて出立した。
「今日は出張やねん。今から名古屋」
「へーえ、そうなんですか」
「実は、コレに逢いにいくねん」
 と小指をたてると、
「それは、よかったねーえ」
 と、子供を綾すようにおどけてみせる。
「早よう、起きてもてなァ。五時に起きてもた」
「早すぎるっちゅうねん」
 と芸人の合いの手のように返す。
 ここまで、この女と、気さくな話ができるようになったか。おたがいに遠慮せず、かと云って相手のテリトリーには踏みこまない、理想の関係によくぞ成れたものだとおれは感慨に耽りつつも、「まだ早いけど歩いてぼちぼち行くわ」と踵をかえした。
 バスターミナルに着いて同じく新大阪行きのバスを待っているのだろうと思われる肥った美形の面立ちの女子と会話をしていると、おれの時刻表の読みちがえで出立は十二時台も十三時台も二十八分であることが判明した。しかも、そうなると、十三時台では名古屋に十六時には着けない。
 十二時二十八分発のバスに確定したという次第だった。
 時間を潰すためにすでに喫茶店にはいってきたが長居できるものではない。昼どきで軽食にとはいってくる客が立てこんでくると予見できる頃に店を出て女子と喋ったという訳だ。
 中江市のスコラホテルまえには新しくディスカウントストアが出来ていると今泉さんに聞いていたので歩いてそこへ寄った。
 店員に訊き、エタノールのコーナーに寄ったが、生憎ポケット瓶は品揃えとしてなかったのでバスターミナルまで折りかえした。
 はたして二十八分ちょうどにバスが来て乗って、尾上インターチェンジまでは尾上市の旧道を走ったので、前に営業で行っていて義理のわるい辞めかたをした会社の近くの店長と顔馴染みのガソリンスタンドの丁度まえで運わるく信号待ちでバスが停まったので気づかれないように前だけをみていた。
 やっとバスが動きだし、路地の奥の元勤めていた会社のあるビルを見たらたしか三階の窓に大きく書かれていた筈の社名ロゴがなくなっていた。
 その後、こんな処にコンビニが出来たのかと驚いていたら、ようやくバスは高速道路に乗った。
 だが乗車して五十分くらい経つインターチェンジのバス停あたりから、もう考想伝播が出そうで辛くなってきて、よほど降りようかと思ったが、それでは相手のブロガーに会えなくなってしまうので男として駄目なのでリスパダールを補給しながら何とか千里ニュータウンまで保たせた。
「払い戻しはいいから」
 と云って新大阪までの切符と整理券を支払口に入れてバスを降りた。
 地下鉄の駅の構内にはいると、売店で缶ビールを買って一気にのんでその缶をショルダーバッグに納った。
 まだ二時まえだ。ビールを飲んだのはおれ位なものだろう。
 パネルをみて新大阪までの料金をたしかめる。
 改札をくぐってホームに着くと近くに居た駅職員に右左どちらのホームからが新大阪に向かうのかを尋ねた。
 対面する長いシートが二本の車内だった。
 安堵した。
 ようやくビールがまわってきて、麻酔作用で考想伝播が完全に消えたのが自身で分かった。
 人がこちらを注視しているという状態ではないので楽だ。
 都会に住む人たちもただの人間だと思える。仕事の義務感以外に何の義務感も持たない服装だけお洒落な肉質のぶよっとした怠惰な男女が、それぞれに座っている。
 小母さん二人が目のまえで喋りだしたので席を立って車両を変わった。
 この車内はやけに女が多いなと思って全体にじっくり俯瞰して見れば、座席の色が二種類あっておれの座っているのは薄緑の女性専用シートだったのに気づいた。慌てて席を立って後ろを振りかえると『優先座席』のシールまで貼ってあったのに気づいた。
『のぞみ』の指定席の切符を買って出発まで時間のない号に駆けこんで乗った。『のぞみ』だと名古屋まで途中京都にしか停まらないから速いと、今泉さんに聞いていたのだ。
 車中には喫煙コーナーという便利なものが出来ていた。恐らく多くの愛煙家から要望があったのだろう。潔癖な換気システムなので煙が滞るということがなかった。システム導入をした会社は利益をあげているだろう。
 その喫煙コーナーで喫ったり、デッキで立っていたりという時間を多くとって殆ど自席ではゆっくりしなかった。人が多いところに居るよりはその方が神経が楽だ。デッキでは冷房の強風がまともに顔に当たって頭重感を払拭してくれた。
「ええ、それが先日ですね……」
 等といった語りのビジネスマンのおたがいに協力してセールスをしていると思われる他社の社員と電話で話す声が聞こえてくる。
 その声を不快には感じなかった。
 駅について、タクシーの運転手とコンビニの店員に道を訊くとすぐにホテルは見つかった。
 フロントでチェックインを済ませてから、喫煙コーナーから相手のブロガーにケイタイで連絡する。留守電に吹きこんですぐ、相手から折りかえしがあった。丁度、駅に着いたところらしかった。
 待つこと十分。
 喫煙コーナーのガラス越しに、こちらに話しかけたそうにして男がはいってきた。おれの方はブログで顔も動画も揚げているので相手からは探しやすい。
「本條さんですか」
「matsumayoさん?」
 意外だった。
 もっとでっぷりとしたサラリーマンタイプの中年を想像していたのだが、身の引きしまった年齢より若く見える好青年タイプだった。昔、テレビロケで同行してもらったカメラマンの雰囲気に似ていた。 部屋の鍵をドアに差し込んでまわしても開かなかった。まだ入室の時間になっていないのだろうと考えて十六時まで待って鍵をまわしても、やはり開かなかった。二人して一階に降り、どうやって部屋を開けるのか訊いたが、フロントは普通にまわせば開くと言うばかりだったのでもう一度部屋のまえに来て同じ動作をしている内に、過去に泊まったホテルのドアの開け方を思いだして、鍵を一方向に目一杯まわしている状態でそのままドアを押したら難なくドアは開いた。
 今度は照明が点かなかった。スイッチを押しまわったり摘みを廻してみたが一向に点かなかった。また二人してフロントに降りて訊くと、照明パネルの穴にルームキーのタグを挿しこむと点くということが分かった。我ながら愚かだった。前にもこの方式のホテルに泊まったことがあるのを思いだした。
 中江市の名物の『へそまんじゅう』と、近隣の市の地酒と、中江市のギフトショップに売っていた有田焼のコーヒーカップ兼茶碗蒸し用の器を、説明をしながらmatsumayoさんに渡した。
 予想に反して彼のほうは手ぶらだった。
 出会いに記念して乾杯しようということで、その地酒を二人でホテルの部屋のコップで飲んだ。
「ああ、やっぱり変ですね」
 と最初がビールでない飲み方のことを東京のブロガーは言う。
 とりあえずのことで、一階で見つけていた自販機でビールを買ってきて、もう一度乾杯した。
 外ですれちがった他人を見ても悪漢ぽい奴はまったく居なかった。これも名古屋の品のいい気風かと思っていたが、ブロガーによると俺たちの泊まっている地区は新興開発都市らしくて、駅の反対側に行けば、もっと猥雑な感じらしい。当然、行き来する人々も違っているのだろう。
 パソコンをフロントで借りていたので、それでスポットなどを検索しようかとも思ったが、二人ともそれを邪魔くさく感じてフロントで居酒屋街の場所を聞いて歩いていった。
 『昭和食堂』という外観からしてレトロな店にはいった。

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