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『二人だけのテニスコート』ーーー1 [自作原稿抜粋]

【この作品は、フィクションです。】

 ぼくは定時制へ編入したので表向き就職していなければならなかった。おなじ町内の個

人商社の社員であるという証明書類を母がそこの社長とは知り合いだったのでかいても

らった。学校は楽だった。僕のかよったその定時制は織物工場ではたらくいわゆる若い

女工さんらのために昼間部という学部もあった。ぼくはその昼間部にかよった。

「室井、今日、一緒に帰ろうや」

 植田が上機嫌でいつものように話しかける。僕はなかよくなった通称まじめグループと

一緒に帰途をあるいた。

「佐藤君は、今日、仕事やったっけ」

「ああ、俺は毎日仕事やがな。誰も遊ばしては繰れへんがな」

「植田君は、仕事、せぇへんの?」

 ぼくは植田にきく。

「せえへんで。考えてみいや、俺ら未だ十八やがい。他の全日制の高校の奴なんか皆、

仕事してへんがい。俺ら、頭悪いからここしか入られへんただけや。卒業前になったら、そ

ら、仕事先は決めるで、そいでエエねやがい」

「仕事いうたって、今、行けんのは、佐藤が行っとる様なしんどい仕事やがい。卒業してエ

エとこ決めて、それからでエエがい」

 柳川が口をはさんだ。

「せやなあ、オクダ商会はなァ。きついなあ。せやけど、僕、定時制なんやから、一応、バ

イトだけでもしとらな気がひけるいうのも有るわ」

 とぼくがいうと、

「ホナ、行かんかい。小遣い増えるど」

 と植田は飄々といってオフロードタイプの原付のエンジンをかけた。

「大きい音やなァ」

 ぼくの声はエンジン音にまけている。

「何? お前のう早う、原付の免許くらいとれよ。ホナ、バイバイ」

 そういうと植田はスロットルをひらいて合流した県道の右へはしっていった。

「ホナ、わいも、帰るわ」

 そういってもうヘルメットをかぶっていた柳川もモンキーといわれる原付を駆って植田の

いった方向にはしりさっていった。

「あいつら、エエのう…」

 佐藤君が呆れ顔でいう。

「ホンマによ」

「室井君は、免許とらへんのか?」

「一応、バイク通学か仕事の為かやないと許可してくれんやろう。僕、仕事も決まってない

し、家も歩いて十五分じゃなァ」

 家のまえの県道で佐藤くんとはわかれた。

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