So-net無料ブログ作成
検索選択

『中江警察』1 [自作原稿抜粋]

 十月二十九日、火曜日の午前三時すぎに、本條は中江警察捜査一課宮下からの電話を受

けた。

 自殺らしいが他殺の線もあるという事案だった。

 現場はスコラマンション。

 男が飛びおりたらしい。

(この雨じゃ、証拠も流されるなァ)

 本條は、そう思いながらコートを羽織った。

 この時期にしては、台風でもないのにすこし強めの雨が降っていた。

 自宅一軒家の庭のワーゲン・ポロに乗りこむ本條の肩を、その雨が一瞬濡らせた。

 赤色灯が二重奏をかなでている。

 人だかりが出来ていた。

 鑑識が照明を焚いている。

 頭蓋骨陥没、無惨な死体だ。

 宮下と合流する。

「あそこから、らしいですよ。即死です」

 一回頭をよじって、宮下がビルの屋上を示した。

「そっちが大事だな」

 非常事態なので、玄関のオートロックははずされていた。

 二人して屋上に昇る。

 被害者のものと思われる革靴が、フェンスの手前にそろえられており、鉄の小さな文鎮

に押さえられて遺書と思しき封筒がその横にあった。

 害者、いや自殺者は黒岩哲男、五十三歳。無職。妻帯していて中学生の息子と大学生の

娘を持つ。このスコラマンションの最上階に住んでいたらしい。

 夜中なのに背広姿での飛びおり自殺ということは、やはり本人が自ら意図して死んだと

考えるのが妥当だろう。

「遺書は、鑑識にまわってからだろう。明日のことにするか」

「本條さん、家族への聞き込みですよ。すぐ下です。行きましょう」 流石に、宮下は抜

け目ない。

 黒岩の部屋の玄関の戸は開いていた。

 山下刑事が奥さんにいろいろと聞いているところだった。

「あとは明日以降」

 山下刑事ははいってきた本條と宮下に、手で退室を促した。

 三時四十分をすぎている。

 一度、ゆっくり睡眠をとってもらう方がよいだろう。

 検死、おそらく行政解剖もおこなわれるだろうから、害者と家族の対面も明日夕方以降

になる。


にほんブログ村 小説ブログ 現代小説へ
にほんブログ村
nice!(2)  コメント(1)  トラックバック(2) 
共通テーマ:アート

nice! 2

コメント 1

山雨 乃兎

>ビター・スイートさん
>makimakiさん
ナイスを有り難うございます。(^。^)
by 山雨 乃兎 (2014-07-09 02:43) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 2