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『欠落』(ショート・ショート) [自作原稿抜粋]

   欠落

 【注意! この作品は、18歳以上の読者を対象としています!】

 遂に、その日はやってきた。

 勃たないのである。

 その日は、深く考えずに寝た。

 次の朝、俺はリサイクルショップに行き、アダルトビデオテープの中古を三本買ってきた。

 部屋を閉め切ってVTRを観た。

 むらむらとはするのだが、性器は柔らかいままだ。

 美人を観ても、自分の大好きな巨乳ものを観ても、結果は同じだった。

 勃たないのである。

 オルガズムにも至らない。坂を上る感覚は僅かに有るのだが、気持ちよい処まで往かないのだ。

 煙草を吸った。

 何もかも馬鹿らしい。

 原稿。月刊誌に頼まれた二十枚のエッセイの〆切が明日だった。十五枚はできている。

 タイトルが、エロスを表現する私、である。

 書ける訳がない。

 昼飯も食わずに、スーパーマーケットに酒を買いに行き、昼の十二時からビールを呷った。

 こんな時間の酒は、自分にとって前代未聞だった。

 情けない。

 例によって、自分で編集した女のアナウンサーか、女のニュースキャスターが、一人でニュー

スを読んでいる場面を繋いだVTRを観ながら飲んだ。

 いつもと違う。少しムラッとするが、いつもならもっとムラムラ来て脳裏は、彼女達一人ひと

りとの交情の場面が忙しくなる筈なのに。

 そういう画が浮かばない。

 チーズとピーナツ揚げを囓りながら、ビールを飲み、次いでウィスキーの水割りを呷る。どん

どん呷る。

 やってられない。

 コンピューターのメディアプレイヤーで、お気に入りの編集のを流しながら、ボンジョヴィや

ホイットニー・ヒューストンを聴きながら、ひたすらアクセルし続けている内に、眠けが来て数

時間眠ってしまった。

 夕方、母が帰ってきて、

「はい、おめでとう」

 と、柏餅を呉れた。

(そうか、今日は、誕生日か……)

「純一も、もう五十やなァ……作家になれたんやから、そろそろ再婚せなアカンなァ……」

(それか!)

 角田先輩が、十年前に言っていた。

「室井のう、……ワシ、アレが弱ってもてのう……もう、歳かのう……」

 塚口薬局の店主が一週間前に言っていた。

「室井さんね、……そろそろ五十ですから気ィつけて下さいよ。……全くダメになる人も出る歳

ですから」

(えーー……?)

 俺は、何を楽しみに生きていけばいいのだ。

 肝機能数値も、このところ悪く、内科医も、「そろそろ、お酒やめたったらどうですか?」と

言い出す。「室井さん。世の中酒だけが楽しみやないですよ」と言って小指を立てる始末。

 ともかく、考え過ぎないように、と自身に言い聞かせて、べろんべろんに飲んで、その日は寝

た。

 

 次の朝、月刊誌の編集に電話して、エッセイは、次の月まで飛ばしてもらった。

 俺は、車を駆って、神戸の歓楽街まで、出て、朝一で指名して、いつものアケミ姉さんを買っ

た。

「東野先生、今日は、エライ早いんやねェ、珍しい」

「否、……一寸、アケミさん耳貸して」

 俺は、そう言って彼女の右耳に口を近づける。「不能になってもた。……多分」

「ええ? フノウ…」

「はっきり分からんけど、昨日から……出ェへん……」

 アケミは、自分が一番先に偉人の秘密を知ったのを笑みで表した。

「もう……、そない気にせんと、先生、お仕事柄、頭ばっかり使われてやから、……多分、一時

的なモンやと思うわ私、……」

 そう言いながら、アケミは俺の服を脱がし掛け、全てを脱がすと、口づけをくれた。

 初めにキスをくれるのは、こんな商売女の内この人しか俺は知らない。それだけ、俺は、特別

に思われているのかといつも自信を増すのだった。

 大きな乳房を押しつけて、同時に俺の性器を握る。

「いや、ホンマやわ。……先生、感じへんの?」

 何とかなるて、と言って、マットプレーを促す。

 筋肉の少ない俺の体に、特に腋や鼠蹊部にアケミの乳房の塊が当たる度に、確かにビクッと生

々しい艶気を感じるのだが、それも、それぞれがほんの一瞬で、快楽の程度も以前の半分以下に

しか得られない。

 はがゆい。

 半立ちの陰茎に、アケミ姉さんが、かろうじて避妊具をつけてくれた。

 肥り気味のアケミ姉さんの強い膣圧で俺の魔羅はぐにゃりとへしゃげたり陰核の方へ逃げてし

まったりの繰り返しだ。

「もう……」

 と、アケミは一旦溜め息のような声で言い、避妊具を外して口腔で轡えた。

 手も舌も使ったが。

「アカンわ……先生、どないもで来ェへん……」

 俺の陰茎は萎縮して、余計に小さくなり、マットの上で正にノックダウンしている。

「ごめんなァ……」

「否、先生の方が辛いやろ、……ここへ来て一遍も気持ちようなられへんたら……せめて、私のここ

に入ったら何とかなりそうやのに、……」

 彼女は、そう言ってマットを洗い用具を収い、俺に、湯を奨めた。

 まな板プレイと称される時間、彼女は、俺を抱いてくれた。挿入のないまま、愛撫で髪を撫で、

執拗に長い口づけを繰り返しくれた。「かわいそうに、……先生……」

 と言いながら。

 手が上顎をこする。舌が舌に絡みつく。

 玄人の女は、口の中が大きくつくられていて、時には、少し煙草臭く、歯も義歯を被せている

のが分かって、俺は、いつもは、口づけを好まない。それに、長時間口づけをしていると、歯茎

からの出血や、自分の口の中の傷で、お互いの血が交ざり、感染症に罹り易いので、毎回、短い

口づけしかしない。

 しかし、今回は違った。

 嵌められないのだ。

 もう、ここにしか交わりはなかった。

 俺は、二時間の処を、さらに二時間延長した。

 話すしかなかった。

「先生、……一寸の間、抜くのもやめといたら……あんまり、そればっかり考えるから……それ

に、溜まってないんかも知れへんし……」

「優しいなェ、アケミさんは……」

「セックスだけが一番大事でもないのかも知れへん……私、自信はないけど……」

「アケミさん。……もし、一緒になってくれ言うたらなってくれるか? 経済的には大丈夫や。

……俺も、ここ二年ほどで大分有名にもなったし、今、連載は二枠やけど、まだ増やすつもりや

し……」「……あっは! 先生、そんな事考えんとき、ウチみたいな雑巾もらわんでも、別嬪さ

ん、もろたらええがなァ」

「否、そいでも、俺が、アケミさんがええ言うたら……***嵌めんのは出来ェへんかもやけど、

……往くのは指で、ちゃんと往かしたげるがな、……それで、ええやろか?」

「ええよええよ、そこまで思われとんのは、ウチ嬉しい。……そいでも先生、……まだ諦めんと

きよ。……折角、あんな立派なもん持っとったのにー……」

 

 三日経った。

 俺は、泌尿器科へ行った。

「室井さん、……落ちついて聞いて下さいよ」

 若い医師は、検査データをモニターで見ながら、そこで言葉を一旦区切った。「インポテンツ

とは違うんですよ。……これね、……女性で言う処の閉経です。……精巣が、もう精子を創らな

くなったんですよ。……早い人は早いんです。……丁度、貴方の歳、50だったっけ、それ位から、

……体質と考えて下さい。……女の人でも初潮の遅かった人は閉経が早いんです。不公平も何も、

それは遺伝子に刷り込まれているんですよ。……貴方、精通はいつでした?」

「確か、十五の時」

「それじゃあ、終わりも早いんです。精通は、普通、十三、四くらい、早い人は、十一、二才く

らいですからねェ……そんなに悩まずに、……まあ、それだけ人より早く大人になったと思えば

いいんです。……それとね、内科のデータも、ここで今、観てるんですが、……お酒のほうはや

められたほうがいいですね。……GOT、GPTが二回の検査共、百を超えてますからね。……

貴方、C型キャリアでしょ。……まあ、そういう事で、お大事に」

 

 俺は、久し振りにフィリピン・バーに寄った。

 煙草が旨い。

 これも長くは吸えないかも知れない。

 ビョンソンです、と名乗った女の乳をチャイナドレスの切り込みの脇から手を入れて揉みなが

らウィスキーを呷る。

 ママの視線が、さっきから、俺の視線に絡んでくる。

 キャバレーに近いけど、お触りバーじゃないんだから、節度を守って下さいよ、と、そう言い

たいのだろう。

 俺は、ビョンソンに、ママに替わってくれる様、伝言した。

 ママがにこやかに俺の隣に座る。

「ママ、……俺、老人になった。だから心配しなくても誰も襲えないんだよ……」

 中国拳法で鍛えた姿勢のいい気品のあるママは、俺の二の腕をつねる。

「冗談言って……」

 俺は、懐から八百万の束を出し、どかんとテーブルに置いた。

「よーし、今日は豪遊しよう。……皆、じゃんじゃんジュース飲んでよ」

 ママは、札と俺を瞠目して見る。

 昨年度の印税の三分の二の額だ。

 フィリピーナが三人、俺の横に吸いつく。

「俺は、不能や!」

 俺は、そう言ってママの逞しい胸をぎゅっとつかんだ。

                                                (了)

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