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第一回、東京家出の記ーーー17(最終章) [自作原稿抜粋]

 語りにくい部分を先延ばしにしていましたので、大分空いてしまいました。

 季節は冬になろうとしていた。

 東京でも、僕は以前から通っていた新興宗教の集会に出た。

 そこでは、バンドマンからやっと足を洗えた人が体験談を述べていて、僕は、スティックを持って集会に行っていたので、みんなに注目され、自然、ミュージシャンを目指して上京してきた話しをした。

「**(宗教団体の名前)という処は、不思議な処ですね。バンドマンをやっと辞められた、という人と、これからバンドマンになる人が鉢合わせするなんてね」

 と司会者が言って、一同が湧いた。

 さて、僕は、その後も何度か小さな単位での集会にも出るようになり、そこで、或る先輩に、

「山雨(ホントは本名)くん、こっち(青年寮(埼玉))に来れないのかな? 仕事はつづけるとしても、ここから通うことだって出来るだろう」

 と誘われた。

 僕には嬉しい話しだった。

 最低でも生活費を入れていれば、アルバイトだけして音楽活動が出来る、と思った。

 それで、ある日、派遣先の偉い人に、

「夢があるから辞めたいんです」

 と切りだした。(ホントは、派遣元のマネージャーに言わなければならないのだけれど、若気の至りで、当時の僕は知りませんでした)

 派遣先も派遣元も納得してくれて、晴れて、僕は青年寮にはいった。

 ところが、寮にはいると、先輩(歳のちかい寮生)の言ってることと大分事情が違った。

 他の幹部の人に、沢山の数の集会に夜ごと引っ張られて、尚かつ、

「将来のことを考えて、きちんと就職しなければいかん。そんな、ミュージシャンというような地に足のついてない夢を目指すのは辞めなさい」

 と言われ、

 何の抵抗も出来ず。(勿論、こちらの姿勢は言ったのだが、全くとりあってくれない)

 僕は仕方なく、形だけ幹部の意向に合わせ、面接に行ったりした。

 当然、段々気力もなくなってきた。

 寮の近所に自転車で買い物に出ていると、警察官に職務質問されたりした。

 寮で借りていた自転車が盗難品ではないのかとの嫌疑をかけられ、僕はチェーンロックの番号を合わせて解錠した。

 嫌疑が晴れると警察官が言ってきた。

「そうか、君も、悩んでるんだね。……君の性格なら、警察官になったらいいよ」

 練馬区の友人に電話すると、

「**大丈夫なのか? ホントにそれでいいのか。とにかく、例のミーティングには出てこいよな」

 と言われた。

 新しいバンドの動きが始まっているのだった。

 友人は付け足す。

「帰っちまうんじゃないだろうなぁ」

「何か、帰っちまいそうだなぁ」

 全く図星だった。

 僕には、もう動きがとれなかった。

 このときの幹部の仕打ちには、今でも立腹が遺っている。

 何しろ、他へ動くにも金も少なくなっていた。

 或る日、歩いて東京駅に行った。

 悔しいけれど、もう実家へ帰ろう。このままでは何の為に東京に居るのか分からない。

 いや、まて、宗教団体の幹部には就職する動きを見せておいて、上手くフェードアウトすればいいじゃないか。

 僕は懊悩した。

 僕が、住み込みの仕事へ面接に行くと言うと、幹部は強硬に反対した。

 どこにも出口はなかった。

「ご実家、料金を用意されます、と言われていますが、どうしますか?」

 駅員が運賃着払いの相談の結論を僕に迫った。

 僕は、なくなく逃げて帰った。

 実家につくと、堰を切ったように、僕は、今回の家出の顛末を両親に話した。

 母は何度も叱ったが、父は、平静な表情を変えず、一言も怒らなかった。

 後日、母から聞いたところによると、父は僕が家出してから相当に心配した日々を送ったらしい。

 結局、危ない目には遭わずに過ごした訳だが、不本意な処でミュージシャンへの夢は崩れた。

 いや、この当時は、家出を失敗したというだけで、未だ夢は諦めていなかったが。

 皆さん、とぎれとぎれになりましたが、これで、『第一回、東京家出の記』は終わりです。

 実は、「第一回」と銘打っているように、「第二回」の家出の経験もあります。

 同じように東京へです。

「第二回」は、ミュージシャンになる為の家出ではありませんでした。

 訳ありですので、設定を変えるとかして、お話し出来るときが来たらお話しします。

 長らく、お読み頂いて有り難うございました。 

 こんどは、『第二回、東京家出の記』でお会いしましょう。



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