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『河口が見えたのに』ーーー1 [自作原稿抜粋]

注意! この作品は、18歳以上の読者を対象としています。 

 【新風舎出版大賞二次選考突破、碧天舎の新人賞、二次選考突破作品】 

 奇想天外な話しを小説と呼ぶのだろうか。
 ストーリーがあるものを小説と思っている人が多い。
 ストーリーがない小説もある。
 ひたすら、思惟した事を書きつづけていくものを小説と呼ぶ。これが小説だ。この私の右手が動いている事が小説なのだ。書けたものを小説と呼ぶのではない。書いているものが小説になるのだ。

 今日、私は、深夜まで起きていた。安定剤と睡眠薬が血中から全て出ていってくれた時、私は、やっと覚醒した。もう、今日だけは、薬を飲みたくない。折角、はっきりした脳を又、混沌へと戻してしまうのだ。わずかな覚醒している時間、私は、小説を書き、又、薬を飲む。私が私であるのは深夜の二、三時間でしかない。これでは私は、私を生きているのではない。
 さて、とか、ところで、とか、そういう使い古された接続詞をつい書いてしまうから、ありきたりな文章になってしまうのだ。これは小説だ。明らかに小説だ。

 私は、私の母がすぐに死んでしまうだろうと思う。
 私は、私のせいで母が弱っていくのに、手を打つことも出来なかった。
 パーソナル・コンピュータを使うと、ルーターの音が母の睡眠を妨げることを、私は、ついさっき考えてみただけだ。初めて、私は、それに気づいたのだ。
 弟が自分の足で立つ。別の弟が派生家族という立脚点に立っている。
 私は、国の税金でかろうじて物を食べている。
 母が死んだ後、母が死んだ悲しみに暮れるよりも、私は、遂に私自身だけの力で立脚点にたたなければならなくなり、私は嘲笑を浴びながら労働しつづける時間に支配される事になる。
 私には、障害基礎年金という吸い袋しかない。
 私は、その時には小説を売って生活してゆこうなどと、その時の私は、売れている小説家なのだろうと思い二、三年前を生きた。
 私には、立脚点がないのだ。
 死んでいる現在の妻が、現在から放物線上の先の軌跡の存在として私に言う。
「貴方は、小説家になるんでしょう。私にはなれないって、貴方は言ったじゃない」
「貴方の計画が実現しないことなんてないわ。私はもう、成れないでいいの。私は、私のことを心配する必要がなくなったのよ。だから、今後は、理想の枠に流し込む石膏が足りないってなげいている貴方を、私は見ているだけでいいの。苦しんで頂戴!!」

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