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『岬』読了(追記あり) [最近、読んだ本]

 中上健次さんの、『岬』を読みました。

岬 (文春文庫 な 4-1)

岬 (文春文庫 な 4-1)

  • 作者: 中上 健次
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1978/12
  • メディア: 文庫

 上記バナーの本ではなく、文春文庫の短編・中編集から、表題作『岬』だけを読みました。

 三田誠広さんが、小説作法の本の中で仰有ってましたが、一時期、格好悪いことを告白する作品が次々に出された時期があったそうですが……、もし、私小説だとしたらキツイです。気分が重くなります。

 ともかく、明日、追記で感想を書きます。

 では。

 

 レビュー

 基本的に『枯木灘』とストーリーは同じです。
 主人公、秋幸。その秋幸の視点が彼という人称表現で書かれているので、カメラの位置としては自分を少し後ろから見ているような格好です。主人公(秋幸)は土方をやって、請負師を目指しています。
 浜村龍造に対する憎悪が随所に描かれていますが、今作では龍造はちらちらとしか登場して来ません。
 『枯木灘』では、主人公、秋幸に弟が二人居た(現在進行形で)という事ですが、今作では、歳の近い兄か従兄が出てきます。一寸、設定を変えているという事でしょう。
 そして、例によって、腹違いの弟が殺人を犯す、という場面。『枯木灘』では、襲われた秋幸が逆上して、弟を石で殴りつける訳ですが、今回の相手は足の悪い腹違いの従兄です。凶器は刃物。健常な方の足を何度も刺されて失血死です。(済みません。詳しく読めていないので、説明(登場人物の関係)が間違いだらけかも知れません。詳しくは本編をお読みください)
 その殺人現場を種違いの(秋幸にとっての)姉が目の当たりに目撃してしまう。
 姉は、葬儀などの裏方の仕事の疲労と殺人を目撃したことのショック等から寝込みます。 この姉は、やっぱり殺人を見たことと、さらには昔に兄が首を縊って自殺したことなどのトラウマから精神を病んで、自殺しようとします。
 秋幸は、新地へ飲みに行ったときに、腹違いの妹を見つけます。店は飲み屋ですが、実質は売春をする店です。秋幸には腹違いの妹が二人居て、片方は良家に育って現在も幸福のなかに居る。もう一人の妹は龍造が売春婦に産ませた子です。実母と同じような境遇(売春をしている)に今在るということを漏れ聞いていた秋幸でしたが、その店に行って彼女を見たときに、顔つきなどから自分の腹違いの妹ではないか、と直感的に思う訳です。
 浜村龍造のことは、今作では、「その男」という風にしか登場してきませんが、土地を買収して転売して成り上がった男。造成の為には、付け火までしたと噂のある男。そして、自分(秋幸)を放っていった男。秋幸の母、フサとも龍造は遊びのような関係を持ち、その結果、秋幸が生まれる。しかも秋幸が生まれるときには、賭博か贈収賄か(この辺が熟読できてないので、不正確です。済みません)の罪で刑務所に入っている。龍造には本妻も居たのに、フサにも手を出し、他に妾も創っていた。
 どうせ碌な男ではない、と秋幸は思います。
 ですが、この感情は読みようによっては、父に棄てられた事が口惜しい、ただそれだけの感情の増長なのではないか、とも読めます。
 そして、秋幸は、自分の腹違いの妹かも知れない女と、客として関係を持ちます。そこには、自分の家の血が穢れている、だから、父や忌まわしい血に対して復讐してやる、という意味が込められている。
 こういうストーリーが細部が描かれて書かれているので、中上健次さん自身の経験なのではないか、と思ってしまいます。
  精神を病んだ姉が、家族が昔平和に暮らしていた頃、行った岬に、みんなで行こうと言い出し、ピクニックに出掛けます。岬の後ろの断崖には秋幸の育ての親の墓、そして、その先祖の墓が有り、墓参りをします。このシーンは、形は普通ではないけれど家族という形でみんなが繋がっているという事を象徴的に描いているように思います。
  ここまで決定的な深刻な人生の軌跡をディテールを駆使して描いたら、正に文学です。逆に、作家と言われる人たちが、みんなこういう中上さんのような作品を書けるだろうか、と呻ってしまいます。こういう作品こそを、渾身の力作というのでしょう。

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