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『第一回、東京家出の記』ーーー3 [自作原稿抜粋]

 次の朝、ーーーお盆休みが十五日までだったと考えると、十七日になるがーーー僕は、個人が経営してる小さなスーパーマーケットで(コンビニというのは、当時はなかったと思う)サンドイッチとおにぎりと缶コーヒーを買って朝食をホテルの部屋で済ませ、チェックアウトしてから、バイクショップを探した。


 国道沿いに有るバイクショップに入り、単車を売りたい、と打診した。


「そうですか、お売りになりたいのですか。ちなみにお幾らだったら手放されますか」


 と、店長らしき人は訊いてきた。


「23万でいいです」


 僕は、そう答えた。


 後から考えると、もっと高く売れていたのだった。


 カワサキKR250は、当時車体価格49万8000円だった。新車で買って、半年ほどしか経っていないのに…。


 僕は売買交渉に自信がなかった。だから、予め、相手が納得する金額を提示しようと思った訳です。(おっと、ですます調とだ調の混用ですが、お許しください)


 値段を低く言えば、相手は飛びつくだろうと考えた。


 僕のその時の所持金が十数万で、その上に23万有れば、食うための仕事にすぐ就けなくても、時間が稼げると思ったのです。


「分かりました」


 店主の即答で売買は成立した。


 お金を財布に入れて、(財布以外にも、手帳の差し込み口にも十万ほど金は分けて収納した)名古屋駅までタクシーを使った。


 名古屋からは、新幹線に乗った。


 僕にとって修学旅行以来の東京行きだった。


 指定席の隣りの伯父さんと仲良くなった。僕は、旅行での移動のときはお金がかかっても指定席をとる。身体が疲労しているのに、座れないなんて最悪だから。


 でも、指定席も善し悪しだけど…。隣りに座った人が自分と馬の合わない人で、その人がやたら話しかけてきたらしんどい。そういう事も、後々の旅行で経験したけど。


 その、隣りに座った伯父さん、東京の大塚で広告代理店を一人でやっていると言っていた。


 広告代理店というのがどういう仕事なのか僕は分からなかったので、訊いたのだけど、結局曖昧にしか理解できなかった。


「そうか、夢を追って東京に行くのか。やりなさい。思う存分、試してみなさい。……まだ、君、若いんだから。失敗しても、それもいい経験だよ。」


 と、伯父さんは言った。


「もし、東京で路頭に迷うようなことがあったら、電話してきなさい」


 そう言って、伯父さんは、僕に名刺を渡した。


「もし、お金に余裕があって、すぐに仕事を決める必要がないなら、渋谷に行って、友達を作りなさい。……もし、今すぐにでも仕事につく必要があるなら、新宿に行きなさい。……仕事を探すなら新宿。友達つくるなら渋谷だよ。……自分から声かけないと駄目だよ。そうしないと友達できないよ」


 と、伯父さんは言った。


 僕は、初対面の他人に話しかけるのは苦ではない性格だったから、自身で安心した。


 そうか、渋谷か。


 僕は、渋谷はどんなところなのだろう、と想像しながら新幹線に揺られた。


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